桜ふみの「ピコ萌え!Future8bitシリーズ2-マジカル チップ 8bitちゃん!~」レビュー

ピコ萌え!「マジカルチップ8bitちゃん!」 え、でもこれって・・・

クラブアレンジですよね!(結論)


というわけで、今回紹介させていただくのは「ピコ萌え!Future8bitシリーズ2-マジカル チップ 8bitちゃん!~」。MOSAIC.WAVさんを皮切りに、momo-iさんの手による「ファミソン8bit」、そのシリーズから続くアイドルマスターのシリーズ等によって広く親しまれるようになった8bitアレンジ。今作はその流れとは別に、Hatch Entertainmentさんによってニコニコ動画よりの系譜を強く前面に出した流れの中で「ピコ萌え!Futuer8bitシリーズ」としてシリーズ展開を試みているアレンジ盤の第2弾のCD、という位置付けの作品となります。


前作(右写真)では「リアルアイドルアニメソングス」ということで、「スーパーマリオ誕生年の1985から95年までの10年間に『アイドル』が歌っていた『アニメソング』を、8bit(ファミコン音)アレンジで収録。」というコンセプトのもと、まさに8bit世代が聴いて懐かしい、それでいて新しい感覚のアレンジを聴かせてくれました。中でもトラック13「EQUALロマンス」のアレンジにおいて、聴き手がジャンプするところにマリオのコイン音を入れたアレンジはかなり秀逸でした(笑)。


ジャケットイラストは前作に引き続きニコニコ動画「初音ミクが可愛すぎるので描いてみた。」 でおなじみの絵師「網野コハク」さんの手によるもの。魔法少女風にアレンジされた“8bitちゃん”がとてもかわいく描かれています。任天堂ちっくな演出がなされたジャケットは、店舗に並んでいたら思わず気になってしまうことでしょう。


そしてなんと今作では帯文を公募。「ろじっくぱらだいす」さんに協力をいただく形で音楽業界初の、「個人サイト上での帯文公募」という、おもしろい企画もやられております。思いっきりガンダムな帯文なんですが、そこは突っ込まないほうがいいところなのでしょうか(笑)


そして今回は珍しくレビューの結論から先に書いてしまっているわけですが、まさにその通り、8bitといいつつも、8bitの枠にとらわれないすばらしいアレンジトラックばかりでした。ではいつものように各曲ごとに紹介していきましょう。



●エレクトロ、ハウス、ジャズ、割と何でもアリのアレンジたち

まず1曲目に収録されているのはvin-PRADさんのアレンジによる「魔法使いサリー/魔法使いサリー」。


公式サイトのコメントにある「『セクシー女教師 吉田サリー(23)が 浪人生の鈴木芳郎(20)に家庭教師をしている。』という、男子と一部の女子なら誰もが憧れる甘酸っぱい青春の1ページを、エレクトロハウスと8bitを融合させる事により表現しました。」のコメントそのまま、れいさんによる妖艶なボーカルと下腹部の底に響くような、とても気持ちのよいエレクトロハウスに仕上がっています。


イントロから16秒まではものすごく8bitなんですが、徐々に盛り上がっていく気持ちのよいリズムに今作全体に漂うこれの、どこが8bit!? 的なツッコミはしてはいけません! といったスタンスが全開で感じられる、すばらしいアレンジです。


2曲目は謎のアレンジャーKOKO-MIMIさんによる「すきすきソング/秘密のアッコちゃん」。


ニコニコ動画やYouTubeなどに「ボーカルエディットを説明してみた。」のタイトルでこの楽曲のボーカルトラックをどのように制作したか、というとても貴重な動画が公開されているこのトラック。動画内で説明されている「ロボット的な効果を演出してみたかった」というボーカルトラックの通り、元々持つ声質を活かしつつ、ボーカルそのものをサウンドの一部のように演出。すべてがベースリズムに向かって溶け込んでいくような感覚に襲われるすばらしいトラックです。


3曲目はゲームミュージックファンにはおなじみ、Voltage Controlled Fascinationさんの手による「花の子ルンルン/花の子ルンルン」です。


「909のキック+ペンタトニックのベル音色っていうのは日本人は特に好きだと思うのですが、何故なんですかね?」というのはご本人の談。ホント好きです。何故なんですかね?(笑)。軽快なピコピコサウンドとすごくマッチしていていい感じです。


4曲目は林ゆうきさんによる「ラブ・ラブ・ミンキーモモ/魔法のプリンセスミンキーモモ」。


おねがいきいてー。新体操の伴奏音楽をメインにやっていらっしゃるアレンジャーさんによるとても涼しげなボッサアレンジ。8bitというジャンルをあえて選択したことで得られるキラキラ感と全体としてたゆたうシンプル感が心地よいトラックです。


5曲目はkzさんの手による「デリケートに好きして/魔法の天使クリィミーマミ」。


一聴してジャズの香りがとても強くにじみ出ているトラック。ご本人いわく「似非スウィングジャズ」だとか(笑)。大好きで大好きで何回、何十回と聴いた曲ですが、バックに流れるピコピコなアルペジオやファミコンで使われる水の中に落ちる音、アイテム取得音等の絡みがこれはこれでアリかな、と思わせるに十分以上の効果を持って響いてきます。


6曲目はこれまたkzさんの手による「不思議色ハピネス/魔法のスターマジカルエミ」。


とてもきれいな4つ打ちトラック。かわいさと色気の混在するボーカルに乗ってくるバッキングはまさにkz得意のトラックそのままといった感じです。普通にいい曲。


7曲目はなんと10代のアレンジャー、U-sukeさんによる「テレポーテーション -恋の未確認-/エスパー魔美」。


モモ、マミ、エミときて、マミ(笑)なわけですが。それはそれとして「自由にやらせていただきました」とのコメント通り、非常にフリーダムなアレンジ。自分の好きをこれでもかっと詰め込んだ感のあるおもちゃ箱のようなアレンジが大河内雅子さんによってぐっと締められ、絶妙なバランスになっています。


8曲目は林ゆうきさんによる「ムーンライト伝説/美少女戦士セーラームーン」。


「エレクトロニカとタンゴを混ぜ合わせたものを8bitでやってみようかなぁと」いうアレンジなのですが、やはり原曲のイメージが力強すぎるのか、どうしても抜けきらない印象。随所に含まれる効果音と選択している音色、残したメロディが何かこうアレンジの方向性として焦点が定まっていないような感覚を受けます、が。林さんの持つ土壌を考えるとものすごく大変な想いをされ、がんばっているお姿が伝わってくるような印象も合わせて受けます。


9曲目はCHRISさんによる「魔法少女プリティーサミー/魔法少女プリティサミー」。


「8bitの音をトランス的なエフェクトで広げ、チープな音との対比を出しています」とのコメントの通り、ステレオできちんと聴いて、このアレンジのすばらしさをぜひ体感していただきたい1曲。SYOBIアーティストファーム所属の期待の新人、宮脇真菜さんのかわいらしい声とのマッチングもすばらしく、元々の持つ歌詞の力、メロティラインも手伝ってすごくよいトラックに仕上がっています。


10曲目は林ゆうきさんの手による「チャチャにおまかせ/赤ずきんチャチャ」。


合いの手のセリフがとてもかわいいこの曲。アレンジとしてもテンポを落としつつ聴かせる感じに持っていきつつも、元々の曲が持つ力強いポップ感がうまく全体に収まりきっている巧みなアレンジ。セリフが入ってることにより随所にちりばめられた効果音が引き立ち、いいバランスに仕上がっています。


11曲目はVoltage Controlled Fascinationさんの手による「La La La~くちびるに願いをこめて~/魔法のステージファンシーララ」。


イントロから締めまで、安心して8bitを楽しめる、そんなアレンジに仕上がっているトラック。そこはかとなく大森玲子な雰囲気を残しつつ、これぞ8bitテクノアレンジ、といって申し分ないトラックに仕上がっています。さすが。


12曲目はCHRISさんの手による「おジャ魔女カーニバル!!/おジャ魔女ドレミ」。


いままでのトラックとはうってかわってキックのない、純粋にピコピコ音だけのアレンジ。と思いきや物足りなくなってきたところにおやつを投下されたような感覚で走ってくるベースリズム。やられました(笑)


13曲目はVoltage Controlled Fascinationさんの手による「DANZEN!ふたりはプリキュア/ふたりはプリキュア」。


前の2トラック同様安心して聴くことができるテクノアレンジの中に、Voltage Controlled Fascinationさんならではの遊びの要素がいっぱい詰まったとてもおもしろいトラック。BPMをあげてあるところも気持ちよさをあと押ししている感じがします。


14曲目もVoltage Controlled Fascinationさんの手による「骨ある限り榮えあれ!/大魔法峠」。


元が元だけにどうなるのかと思いきや、これはこれでものすごいベクトルに持っていったアレンジ(笑)。「最初に聞いた時、野球スポ魂のようなオーラを感じたので、その方向で進めてみました。」とはご本人の談。その方向に間違いなく進んでいるのですが、いやはや、なんとも(笑)。これはもう説明されるより聴いていただいたほうがわかりやすいかと思います。ぜひ。


そして魔法少女の最後を締めるのはkzさんの手による「撲殺天使ドクロちゃん/撲殺天使ドクロちゃん」。


「原曲が欠片も残らないアレンジになりました(笑)」とのコメントの通り、原曲の欠片も残ってないアレンジですが、だがそれがいい、と言わずにはいられない、“ピコ萌え!”を締めるに申し分ないすばらしい8bitアレンジに仕上がっています。



●「懐かしいけど、新しい。新しいけど、懐かしい。」

そのキーワードを元に制作されたという今回のアルバム。すべての楽曲がまさにその通りのアレンジで届けられていると思います。


これだけ幅のあるアレンジャーが一堂に会したアルバムであれば、楽曲ごとのクオリティにおいてバラつきがでるのは仕方がないことなのかもしれませんが、それを乗り越えて存在するこのアルバムを作った意味、価値がキーワードによってうまく集約し、すばらしいものを形作っている。すばらしいプロデューサーの手によっていろんなことにチャレンジしつつ作られたアルバムなんだ、と全トラックを通して実感できるアルバムでした。


過去にも何枚か企画アルバムを紹介させていただきましたが、今回のアルバムはこれまで以上に「企画力」というものを、強く感じたアルバムでした。当たり前のように、8bitサウンドが好きな方、魔法少女が好きな方には当然、安心して聴けるアルバムに仕上がっています。そのうえでさらに企画盤としての目標、得られる効果の確認という点においても、すばらしく価値のあるアルバムなのではないかと感じました。シリーズ1と合わせてこの新しい流れを感じるために、聴いてみてはいかがでしょうか?



ピコ萌え!Future8bitシリーズ2-マジカル チップ 8bitちゃん!~
アーティストオムニバス
発売日2008年7月18日
価格1800円
詳細はこちら



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