桜ふみの「無限の住人」レビュー

懐かしの人間椅子、いや今まさに先端の「無限の住人」

ご存じ、沙村広明作、月刊アフタヌーンにて絶賛連載中の「無限の住人」。かなりトガった方向にテンションの高い登場人物、そこで繰り広げられる殺陣の艶やかさはもちろん、独特な絵柄から溢れ出る写実美に基づいた刹那的な美しさがとてもすばらしいコミックスですが、連載開始14年目にしてなんとアニメ化が決定。今年7月13日よりAT-Xにて放送が開始されております。


監督に「.hack」シリーズで有名な真下耕一さん、シリーズ構成に現在チバテレビ他で放送中のTVアニメ「薬師寺涼子の事件簿」も手がけていらっしゃる川崎ヒロユキさんを迎え、「MURDER PRINCESS」「サムライチャンプルー」等、バイオレンス系を得意とする山下喜光さんのキャラクターデザインでのアニメ化。この記事が掲載される頃にはちょうど第六幕、閑馬永空との闘いが放送されていると思われます。


原作に忠実に、とはいかなかったようで多少殺陣の演出、特に残虐なシーンに対しての演出が控えめになってはいるものの、AT-Xで視聴年齢制限ありで放送という形を取ったなりの描写はされており、また、初期の原作表現に近い背景演出も相まって、見ごたえは十分。ストーリーについてもほどよくまとめられており、原作ファンも安心して見られる作りになっています。


そして今回はそんな「無限の住人」の初期も初期、1996年に制作されたイメージアルバム、鼠男の奏でる至高の文芸ロック、我らが人間椅子の6枚目のアルバムでありました「無限の住人」を紹介させていただきます。


発売以来ずっと入手困難で、幻のアルバムとさえ呼ばれていた本作、なんと「無限の住人」のアニメ化の影響を受けてか、めでたく再販されました!! 長らく聴きたくて聴きたくて仕方がなかった名盤が、ようやっと自分の手の中で聴ける喜びを味わいつつ、1曲ずつ紹介していくことにいたしましょう。



●沙村広明さんの持つ世界観以上に独特の世界観「人間椅子」ワールド

曲を紹介をさせていただく前に、バンド「人間椅子」について紹介させていただきましょう。「人間椅子」はギター担当の和嶋慎治さん、ベース担当の鈴木研一さんのお二方による、ハードロック・ヘビィメタルを基調としたイカ天出身バンド。津軽三味線風なギターの疾走、随所にちりばめられた文学的要素、津軽弁をうまく組み合わせた歌詞による独自性はいまだに追随を許さない、絶対的なオリジナリティを持っておられるバンドです。


なんとなく似たような雰囲気で、と例をあげるとTVアニメ「バジリスク~甲賀忍法帖~」のオープニングテーマを歌ってらっしゃった「陰陽座」がありますが、「人間椅子」はブラック・サバス、レッド・ツェッペリンをベースとしたさらにドゥーミーなサウンド。よりコアなハードファンにはたまらないチューニングや、ヘビィなリフで奏でられる文芸ロックの人気はいまも絶えることなく続いております。私の大好きな「筋肉少女帯」とも深い交友関係にあるバンドさんで、人間椅子x筋肉少女帯による「僕の宗教へようこそ」「君は千手観音」等がYouTubeで見ることができます。必見です。それでは改めまして、曲紹介と参りましょう。


1曲目は作詞、作曲ともに鈴木研一さんの手による「晒し首」。


いきなりの特徴的な、とても「人間椅子」らしいギターリフから始まるこの曲、ギターの音づくりから感じる時代感、流れるように鳴るソロワークがとてもたまりません。曲の途中でガラッと曲調が変わる流れも秀逸。


2曲目は作詞、作曲ともに和嶋慎治さんの手によるタイトルチューン「無限の住人」。


全力和風演出からの丁寧なアルペジオ。語るように歌うボーカルから盛り上がり、ヘビィなギターと民謡ライクなボーカルとの掛け合いの流れが最高です。


3曲目は作詞、作曲ともに鈴木研一さんの手による「地獄」。


「いぇあ!」の掛け声から始まるとても歯切れのよい曲。巻き舌による力強いボーカルのインパクトが先ですが、1つのリフのみで成り立つ曲展開と重なる小気味よいドラムが気持ちよい曲です。


4曲目は作詞が和嶋慎治さん、 作曲が鈴木研一さんと和嶋慎治さんのダブルネームによる「蛮カラ一代記」。


蛮カラに相応しく、とても昭和的な、蛮カラな歌い口から始まり、ハードなギターへと展開、ミディアムテンポの曲調でボーカル、コーラス、ボーカル、コーラスと繰り返す流れから聴かせるギターソロがなんとも言えない雰囲気で大好きです。


5曲目は作詞、作曲ともに和嶋慎治さんの「莫迦酔狂ひ」。


この曲はもう、とにかく冒頭からのベースが秀逸。7分50秒に及ぶ大作は終始、ただただヘビィで、とても聴きごたえのある名曲です。


6曲目も作詞、作曲ともに和嶋慎治さんによる「もっこの子守唄」。


「莫迦酔狂ひ」とはうってかわってスローでメローなバラード。文字通り「子守唄」なのですが、バックに響くギターが「人間椅子」らしさを忘れていない感じです。


7曲目はシングルカットもされた名曲、鈴木研一さんの手による「刀と鞘」。


シングルのカップリングには沙村広明さん作詞・作曲の「桜下音頭」が収録されておりますので、興味のある方はぜひ。とてもとてもヘビィな名曲で、これがタイトルチューンでもよかったのではないだろうかという出来の曲です。このアルバムで「人間椅子」を初めて聴いてみようと思っていただいた方であれば、この曲から聴いてみるとよいかも。


8曲目は作詞、作曲ともに和嶋慎治さんの手による「辻斬り小唄無宿編」。


まさに津軽三味線、まさにメタルと言える最高のギターソロから始まるテンション高めの小気味よい曲。ドラムを聴かせ、ベースを聴かせ、とそれぞれに味わい深いパートが変わる変わる続くところがおもしろい曲です。


9曲目は本作の中で唯一、作詞が和嶋慎治さん、作曲が鈴木研一さんと、共作による作品「宇宙遊泳」。


なんとなく間違ってテクノに傾倒してはみたものの、そもそも間違っていてぜんぜん違うものになってしまったものの、なぜかすごく深い気がする音になった・・・? といったサウンドに仕上がっている不思議な曲です。


そしてラスト10曲目は作詞、作曲ともに和嶋慎治さんの手による「黒猫」。


和嶋さんの曲なのですが、ベースラインがとても秀逸。歌詞、リフ、展開、ネタ、すべてがラストトラックを飾るに相応しい、おもちゃ箱のような曲でした。



●ドミンゴス、頭脳警察、GERARD、そして特撮。

今回はそんな「人間椅子」のアルバム「無限の住人」を紹介させていただきました。このような名盤が再販されたことを、ただただ喜ばしく思うあまり、思わず紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。いまを持ってしても追随を許さない独創感は、「無限の住人」の作者が持つ独創感と相まってとてもとてもすばらしいものになっていると感じます。


普段紹介させていただいておりますアルバムとはかなり遠い位置にあるように思えるアルバムですが、たまにはこんなレビューもいいかな、と思いつつ、同時期に出てまいりましたバンドさんたちの中にもまだまだ名曲、名盤は眠っておりますので、このレビューを読んで、少しでもそういったバンドさんたちに興味を持っていただけたのならよいかなと思っております。また機会がありましたら紹介させていただきたく思っておりますので、是非に。



無限の住人
アーティスト人間椅子
発売日2008年9月17日
価格2598円
詳細はこちら



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