しばた@OHPの「eensy-weensyモンスター 1 (1) (花とゆめCOMICS)」レビュー

ちんちく娘とキラキラ王子のほのぼのラブコメ「eensy-weensyモンスター」

今回紹介する「eensy-weensyモンスター」は、「彼氏彼女の事情」、いわゆる“カレカノ”で有名な津田雅美の最新作だ。タイトルには「モンスター」とあるけれども、別に怖いお話ではない。「eensy-weensy」は「とっても小さい」という意味で、その言葉のとおり、ちんまりとしたヒロインたちが見てて楽しい、かわいらしいラブコメに仕上がっている。


本作のメインとなるキャラは二人の高校生男女。五月七花は、背がちっちゃくて学業・スポーツ・ルックスとすべてにおいて平凡。周囲に濃い友人が多いため、学校ではほとんど目立つことのない女の子。もう一人の常盤葉月は、容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能。何をやっても目立ち、学園の女子にはモテモテで、「王子」と呼ばれてもてはやされている男子だ。


七花は平凡だけど温厚で、要領は悪いけど何事にも一生懸命。他人想いで、母性本能をくすぐる健気さを持った、実に好感度の高い女の子。でもなぜか学園のキラキラ王子として君臨する葉月だけはどうにも苦手。見ているとムカついてムカついてしょうがない。そんな七花のイラつきが頂点に達し、ある日葉月に面と向かって彼の軽薄さ、底の浅さをビシッと指摘する。それがきっかけとなって、葉月は七花のことを意識するようになっていく。


●小さな恋が育っていく様子がカワイイ!

そんなわけで、主役の二人は最初の時点では犬猿の仲(というより七花が葉月を一方的に嫌っている)。しかしそれまでちやほやされてイイ気になっていた葉月が、七花の暴言、というか直言によって自分の底の浅さに気づき、改心してから、葉月はだんだん七花になついていく。改心した葉月の様子を見て、七花も暴言を反省。そうやってお互いを認め遭った二人はどんどん仲良しさんになっていく。


こうして二人の感情が、反発→好意→恋心へと移り変わっていく様子が描かれていくわけだが、その様子は実にほのぼの。そしてテンポ良く描かれているのが読んでいてとっても楽しい。


何より、ちまちました体でいつも忙しく動き回っている七花の姿が、見ていてものすごく和む。彼女のくるくる変わる表情はなんともキュートだし、形が良く触り心地も良さげな頭、ちょこちょこした動き、葉月以外の人に対するときの控えめな態度など、小動物的なかわいらしさを発揮しまくっている。その姿を眺めているだけで、思わず知らず癒されてしまうのだ。


葉月のほうも最初はイヤな奴っぽいけど、改心してからはなかなかのイイ人っぷりを発揮。回を重ねるごとに好感度がアップしていく。また二人を取り巻く友人連中も面白い。七花の親友である美人2人組、竜崎のばら&御堂れんげはゴージャス感たっぷりで、地味な七花とは好対照。この2人が七花をかわいがりまくる様子は微笑ましいし、のばらの女の子とは思えない「イケメン」ぶりも笑える。また、葉月王子の取り巻き連中のおめでたさも秘かにイイ味を出している。


●ユニークな表現技法にも要注目

また、本作はすごくテンポが良くて、お話運びも軽やか。それを支えているのが、津田雅美の達者な漫画テクニックだ。絵がスッキリとしていて温かみもありカワイイってのも大きいけれども、見せ方もこれまたうまい。セリフは説明過多になることなく、分かりやすくてサクサク読んでいける。コマ割り、画面構成も実に達者で感心させられる。


とくに本作で特徴的で、最も印象的なのが、引用した画像にもあるような見開きを効果的に使ったコマ割り。片方のページは七花視点、もう片方のページは葉月視点で、それぞれの目から同じシーンを描いている。「このとき、七花はこう思っていたけど、葉月はこう受け取っていた」というのがすごく直感的に分かる。七花はあくまで地味な庶民視点。葉月は王子らしい俺様視点。見比べてみるとその相違がすごく面白い。


そんなわけで、ラブコメとして申し分なく面白いし、作者の漫画巧者ぶりも光る。優れたテクニックが実にサラッとごく自然に使われていて、鼻についたりしないのもいいところ。とにかくかわいく楽しく微笑ましい逸品なので、普段少女漫画は読まないって人もぜひ読んでみてほしい。


漫画「eensy-weensyモンスター」1巻
作者津田雅美
発売元白泉社
発売日2007年7月5日
価格410円
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