■ しばた@OHPの「暴れん坊少納言1 (ガムコミックスプラス)」レビュー
春はあけぼの 彼女はツンデレ「暴れん坊少納言」
2007年(正確には2006年)、日本文学史を揺るがす新たな仮説が生まれた。それは日本三大随筆の一つである「枕草子」の作者として知られる清少納言が、実はツンデレだったというのだ。この仮説を提唱した人物はかかし朝浩。内容に関しては2007年年7月に刊行された書物「暴れん坊少納言」に詳しい。
……というわけで、今回紹介する「暴れん坊少納言」は、清少納言をツンデレキャラとして描いたユニークな作品だ。確かに学校の授業で勉強したことを思い出してみると、清少納言はいかにもプライドが高く、ツンツンしてそうな感じはする。
しかし個人的には、清少納言にはどちらかといえば「イヤミな女」というイメージを抱いていた。「枕草子」もハイソな貴族女のオシャレエッセイという感じであまり好きではなかったのだが、それがこの作品を読んだら一変した。もう「少納言いい人じゃん」「諾子(本名)マンセー」「式部? 話になんねーよ」ってな感じである(ちょっと言い過ぎ)。
この作品における清少納言は、本名・清原諾子(きよはらなぎこ)、16歳の少女という設定。同年代の貴族の少女たちが歌や恋愛にうつつを抜かす中、悪餓鬼よろしく野山を駈けずり回って虫をつかまえたり、当時女子はあんまり読まなかった漢詩を愛読したりと、型破りな行動を連発する変わり者として描かれる。
そんな彼女の生活はすごく賑やか。ちっともおしとやかでない少納言はあっちゃこっちゃ駈けずり回り、見合い相手の橘則光ともドツキ漫才的な掛け合いを繰り広げる。一条天皇の妃・中宮定子に見込まれ、宮中にスカウトされてからもそれは変わらず、自由闊達な行動で騒動を巻き起こす。
貴族というと、しゃなりしゃなりとして、歌ばかり詠んで暮らしていそうなイメージがあるが、この少納言はやたらおてんばで豪快。口は悪いしすぐ手や足が出る乱暴娘でもある。でもこれがとてもいい娘さんであり、かわいい女の子だったりするのだ。
やることはムチャクチャだけど、気性はサッパリしているし人情味もある。周囲がなんだか回りくどい習慣にまみれた貴族社会だけに、ズバッとまっすぐな彼女の性格がより際立ち、見ていて清々しい気分になる。微笑ましくて気持ちがいい清少納言のキャラクターがこの作品の一番の魅力なのだ。
ラブコメ成分についてはわりとさっぱりした感じ。ツンデレとはいいつつ、橘則光とはときどきいいムードになったりはするものの、デレデレってほどでもない。でも随所で「か……勘違いしないでよね」とか、ツンデレ的セリフを口にする清少納言の姿には、ちょっとグッとくるものもある。あまりベタベタしすぎないところがかえって好印象だったりするのだ。
ちなみに本作の時代考証はけっこうアバウト。史実をいちおう踏まえているところもあるが、おおむね適当な部分が多い。とはいえそもそも清少納言は本名が正確には分かってなかったりするし(参考リンク:清少納言 - Wikipedia)、ドタバタコメディなんでそこらへんが気になることはほとんどない。
そんなことより大事なのはお話としてとても面白いということ。この作品を読むと、国語の授業でしか知らなかった清少納言や、後に清少納言の夫となる相方の橘則光、イタズラ心たっぷりな中宮定子、同僚の和泉式部、ライバルの紫式部といった歴史上の人物たちが、イキイキとした存在として脳裏に刻みつけられる。本作を読んでから国語の教科書を開くと、退屈だった教科書から、新たな萌えがもりもり発見できるようになる……かもしれない。
| 漫画「暴れん坊少納言」 | |
|---|---|
| 作者 | かかし朝浩 |
| 発売元 | ワニブックス |
| 発売日 | 2007年7月25日 |
| 価格 | 609円 |
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